飴を詰まらせて死にたい

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中学一年の時、私を虐めてきた人達のリーダー格の子が、私と仲の良かった子の事が好きだったらしいと。私は随分後になって知った。 そして友達だと思っていた男子生徒が、実は私の事を好きだったらしい事も。 私がただの友達だと。付き合うなんて考えた事もないと。女子生徒に聞かれて、そう答えたのを歪めて本人に伝えられた事も。 それが彼のプライドを酷く傷付けた事も。 私は何も知らなかった。 大事な友達だと思っていたから、ずっと縁が続く友達で居たいという願いを込めて出てきた言葉だった。 傷付けるつもり何て微塵もない。まさか悪意を持って自分の言葉が曲げられるなんて考えた事すらなかった。 ノロマで、自分でも馬鹿なんじゃないかと思うくらい、全てにおいて鈍くて。悪意を感じ取るセンサーがあるとすれば、きっと私のものは壊れていただろう。 そんな私だから。標的にされやすい立場にも居た事も気が付かずに、呑気に学校生活をおくれていたのだと今なら分かる。 自分の恋の為に私を陥れた女子生徒。 それに乗っかって自分達の娯楽にした周りの生徒達。 自分のプライドの為に私を切り捨てて嗤った元友達。 私の周りは、汚い色で溢れていた。その時まで、確かに白かった私の色は。悪意に塗れて汚れてしまった。 気持ち悪かった。 汚れてしまった私自身も。汚してきた人達も。恋愛そのものも。 多分、一種の防衛反応だったのだろうと思う。 恋愛と言うものを拒絶する事で、恋に侵された人達を私の世界から排除して。これ以上汚されない様に、自分を守る事が出来た。 ──だから私は、恋をしない。 そう思っていたのに。私は、先輩の事を好きになってしまった。 だけどせめて、あんな汚い恋だけはしないと。憧れていた少女漫画みたいな、綺麗な恋をしようと。それだけは何としてでも守り通そうと。 夕焼けに染まった道を先輩と並んで歩きながら。未だに癒えない傷を抱える過去の私に、固く誓ったはずなのに。
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