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「なんで逆立ちしてるの」
私はことが終わったあと、すぐに全裸のまま壁伝いに逆立ちをした。
「精子が奥の方まで行くように。妊娠しますようにって」
その全裸逆立ちの様子がおかしいのか、江月(えつき)くんは口許にげんこつを当てて笑う。
ここは私の学生アパート。
江月くんは同じ大学の先輩だったひとで、今は保育士として日々楽しく過ごしている。
子ども好きな彼。
早く自分の子どもを持ちたいと、口癖のように言っている。
「ま、乙(おと)ちゃんはそうしたら僕のところに永久就職だな」
それも彼のいつも言うセリフだ。
私はその言葉で魔法がかかったように、ぽわわんと江月くんとの将来を妄想してしまう。
就職なんてしない。江月くんと一緒に人生を歩んでいく。
穏やかで優しい彼と、可愛い子と、幸せな家庭を築くんだ。
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