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江月くんは動揺することもなく、逆に堂々と言った。
「きみは料理がうまいから。奥さん候補だったんだけどね。風香にできちゃったから……」
「子どもができたら結婚しようって、言ってたじゃない!?」
白い肌を真っ赤にして、倉木さんは詰め寄る。
「だから、子どもできたから結婚する。風香と」
さらりと言ってのける江月くん。
私は訳が解らなくて、眩暈がした。
ふらっ、と倒れそうになったところを、すかさず江月くんが受け止めた。
「……きみは、単に気持ちがよかったから」
誰にも聞こえないように、耳許で彼はそう言った。
私は思わず彼の手を払いのける。
「なになに? 修羅場?」
「ってかどうなってんの?」
「江月先輩って実は肉食系!?」
わあわあと煩い部室を私は後にした。
そして気を鎮めるために、サークル棟のトイレの個室に入った。
「ふふ……あはははは」
怒りや哀しみを通り越して、私は笑いが止まらなかった。
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