5人が本棚に入れています
本棚に追加
☆
生理がこない。
普通の学生にとってはヒヤヒヤすることだろうけれど、私にとっては嬉しいことだった。
大学4年の夏。今、お腹に命が宿っているとすれば、生まれるのは来年の春だ。
ちょうどいい。
大学卒業と同時に、結婚できる。
私はウキウキしながら、キャンパス内を闊歩していた。
「あっ、乙ちゃん。いいとこで会った」
次の講義の為に建物に入ろうとすると、細味で長い髪を揺らした子が駆け寄ってきた。
倉木さんだった。
「サークル以外で会うのも珍しいね」
学部が違う彼女とは、同じ講義になることはない。
「あのね、お菓子作ったの。味見してもらってもいいかな」
倉木さんは肩掛けの鞄から、可愛らしい箱を取り出した。
開けるとそこには、色とりどりのお菓子。
「これってマカロン? 自分で作ったの?」
最初のコメントを投稿しよう!