最終話 心機一転のラザニア

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***  コレットが扉の札を「open」表示に切り替えると、すでに列の先頭に並んでいたスーツ姿の清水が嬉しそうに店に入ってきた。 「やっとここのハンバーグが食べられるよ」 「清水さん、いらっしゃいませ!」 「ご心配おかけしました」  コレットと悠に出迎えられて、清水は少し恥ずかしそうに頬を掻いた。 「正直、出禁にされてもおかしくはないことをしちゃったんだけどね」 「そんなことありません。清水さんには助けられましたよ」 「はは、少しでも役に立てたなら嬉しいよ」  清水はそう言って、上機嫌にいつもの窓側の一番奥の席に座った。  清水の後ろから、常連客や新規の客もぞくぞくと入店してきた。 「おっと、満席か」 「吉野さん! 綾乃さん! いらっしゃいませ!」  ツナギ姿の吉野とその娘の綾乃は、コレットと悠がふたりで並んでいる姿を見て安堵したように目を細めた。 「コレットちゃん、おかえり。悠くんもよく耐えたな」 「いえ、結局俺は何もできませんでした。開店できたのはコレットのおかげです」  吉野の隣で、綾乃も申し訳なさそうにする。 「大変な時に力になれなくてごめんなさい」 「そんなことないです。こうやって来店してくださっただけで嬉しい! あ、そういえば吉野さんのいつも席がきょうは埋まっていますね」  入口近くの席には別の新規客がいてメニューを眺めている。 「吉野さん、相席でよろしければここどうです?」 「おぉ、清水さん! 綾乃、それでもいいか?」 「うん、大丈夫だよ」 「ありがたい、そうさせてもらいます」  清水の向かいに吉野と綾乃が隣り合って座った。  コレットが三人分のコップを持って行くと、三人とも何か言いたげにこちらを見ている。 「どうかしましたか?」  綾乃が心配そうにコレットを見上げて、 「あの……コレットさん、大丈夫ですか?」 「えっと?」 「ほら、マスコミのせいでふたりは別れたんだろ?」 「え!?」  コレットは小さく飛び上がった。  伝えた覚えはないが、どうやら吉野たちには付き合っていたことがバレていたらしく、しかも今回の騒動で別れたと思われているようだ。 「いや、あの」 「コレットちゃんが戻って来てくれたのは嬉しいが、無理はしてないか?」 「悠くん、きっとまだコレットちゃんが好きなはずだよ! 俺たちにできることがあったら言ってくれ!」 「あ、ありがとうございます?」  とっくによりを戻していると伝えるべきだろうか。  迷っていると次の来客があったので、コレットは接客に戻った。  来店してきたのは小夜歌だった。
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