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金色の輝きが、ホールをめぐる。
舌に吸いつくような、きめ細かい泡のシャンパン。
天井からつり下がった絢爛なシャンデリアを揺らすのは、盛装した人々の話し声、笑い声、互いを売り込む声、そして、ジャズの生演奏。
その音の波間を器用にすり抜け、ホテルのウェイターが金色の飲み物を配り歩く。
唯一おどろおどろしいのは、会場の入り口に掲げられたパネルだ。
形は棺桶、枠から血がにじみ出て、字は古い呪いの書のような、切れぎれのフォント。
――第16回 スケアリー・テイル賞授賞式 受賞記念パーティー――
スケアリ―・テイル。
どこかの出版社の部長と長い挨拶を交わして、僕は近くのウェイターからグラスをひとつ受け取った。
「喉、カラカラ」
「私も」赤いドレスのサリーが、テーブルの下で僕の手を軽く握った。彼女の目の前には、鮮やかな青のカクテル。
「こういう場所、やっぱり苦手だ」
僕の弱音に、右隣に座るマネージャーのメリンダが、すかさず反応した。
「あんた一人じゃ、気を失ってたわね。サリーがいてくれて良かった。婚約者に感謝しなさい、アンディ」
僕は、サリーの手を握り直す。「心から、感謝しております」
「たかが、パーティー。明日になれば、ここでのことなんか、みんな忘れてるわよ。みんな酔ってるし」
サリーがいつも通り、さらりと口にした。
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