セカンドチャレンジ

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 そして見つけてしまった。  金運に効果があるといわれるタイガーアイの原石を!  い、いくらだ…。お前様はいくらなんだ…。  固唾を飲みながらそれに触れようとした時、ホトトギスが再び熊に接触を図った。 「お客様、先日も来店されてましたよね」 「は、う、あ、はい…」  熊が救助要請の視線を向けてくる気配は背中でビンビン感じているが、タイガーアイ様が私の意識を掴んで離してくださらない。  すまないが今回も勝手にやっていてくれ! 「それはナイジェリア産のクンツァイトっていう石ですよ」 「あ、し、知ってます。慈愛の…石、ですよね」 「あ、ご存じでいらっしゃいましたか」 「…前に、買ったんです、ここで」 「えっ、そうだったんですか?いつですか?」 「三年前…です」  げげげ。思ってたよりタイガーアイ様の原石高いっ。買えない…。  いや、本当は買える。  現在は玉の輿婚により好きなものを買える財力があるはずなんだ。  しかし貧乏人として生きてきた年月が長いせいか、贅沢をすることを未だにビビっており、結局毎日慎ましい生活を心がけているせいで、この原石の購入を渋ってしまう。  だけど、背中の向こうでは恋が始まりそうな会話が聞こえてくるし、離婚は着々と迫っている気がする。  ここはやはり今後の為にも思い切って買うか…?  ん?  って、ちょっと待て。…恋が始まりそうな会話?  にょろりと首を回して後ろを見てみると、飛び切りの笑顔を浮かべている浜口さんの横顔が見えた。  女の勘が、あれは目の前の男性に興味を示している際に出る表情だと伝えてくる。
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