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「浄化できましたか?」
「あ、はい…。あの、教えてくれた通りに、その、できました」
「よかったです」
まともに目を合わせることができない僕に笑顔を向けてくれる浜口さんに、嘘をついてしまった後味が悪くて俯いた。
折角塩を購入し、方法も教えてもらったのに、本当はまだ浄化していない。
ぬらりひょんのお墓は実家の庭の物置横にある。
家族に会うのが嫌だから家を訪ねることができなくて、結局お墓の石はずっと放置のまま。
半月ほどで兄夫婦と同居する新居に移るらしいからその後に行こうと考えている。
「今日は何をお探しですか?」
「え、え、と。あの、す、水晶は、ありますか…」
「ございますよ!こちらです」
まるでタンポポの綿毛のような柔らかさと軽やかさのある笑みを浮かべて案内してくれる浜口さんの背中を追いながら、ふと視線を感じて店の外を見てみると、スタンド看板の脇から仮の妻が目を細めて僕を見ていた。
なんだあの物言いたげな目は。
おい童貞!消極的過ぎだぞ!もっとがっつけ!とでも言ってそうな目だ。
それにしてもあの覗き方、完全に不審者だ。通報されてもおかしくない。
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