お見合い

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「なるほど。じゃあそれが、私がお見合い相手として選ばれた理由だったんですね」 「はい。僕の世話を誰かにさせたいってことです。僕と結婚したら貴方は僕の世話を一生することになるんです。それでもこの結婚、受けるつもりがありますか」  これを大真面目に言うのだからこのニート、悟りを開いている気がする。  束の間唖然としてしまったが、私も大真面目に答える。 「玉の輿に乗れるなら、結婚しますよ」  一瞬、彼の双眼が見開いたのを見逃さなかった。意外に思ったのかもしれない。  でも私の言葉に嘘偽りはない。  むしろ正直すぎてドン引きされるくらいの素直さだったと思う。  例えこの結婚の目的が、ぐうたらな息子を丸投げし、私を彼専属の家政婦にすることであったとしても、玉の輿に乗れるなら問題はない。 「ちなみにお給料ってひと月どれくらいですか?」  口に手を寄せて囁き声で訊いてみると、ほんの少し渋るような顔をしたのち、彼は呟くように答えてくれた。  私はその金額に驚愕し、そして頬を緩めた。緩めちゃいけないとわかっているが、緩むのだからしょうがない。  だってすんごい額だよ。  生活が潤って潤ってツヤツヤモチモチになっちゃうやつだよ。
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