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「…それ、私も使っていいんですよね」
「…まあはい。…僕も少しは使いますけど」
「どれくらい?」
「多分、四分の一くらい」
「ああ、なるほど。じゃあ、この結婚全く問題ないです」
「…そうですか」弘光さんは呟いて、また俯いてしまった。
彼の気持ちはどうなのだろう。気になって声をかけようとしたが、「入るよ」と社長の声がし、すぐに襖が開いてしまった。
『あとは若い二人で』の時間がもう終わってしまったのだ。
「いろいろとお話できたかい?」
元いた場所に腰を下ろしながら、社長がにこやかに訊いてくる。ただその瞳には焦慮の色が見える気がした。
もしかしたら弘光さんの言う通り、どうか息子と結婚してくれよ頼むよ、と思っているのかもしれない。
とりあえず無難に「いろいろお話できました」と笑顔で伝える。
すると奥様が「貴方、お家のことも言わないと」と社長の腕に手を乗せ囁いた。
「ああ。いや、実はね、気が早い話ではあるのだけど、新居をもう用意しているんだよ。うちが所有する高級マンションだから家賃は払わなくても大丈夫だよ」
私は内心ほくそ笑む。
しめしめ社長さん。私の気持ちが揺らがないようにお金で固めようって魂胆ですね。いいですよ素晴らしいですよ!私はお金の話には目がないですからね!
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