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「す、すみませんっ」
直ぐに起き上がると、仮の妻も体勢を戻し「あんぽんたんっ!」と叫びながら物置へ走って行ってしまった。
あんぽんたんってどういう意味なんだろ、と心の片隅で疑問に思いつつも僕は膝から崩れた。
な、なにをやってしまったんだ…童貞のくせに僕は…一丁前に女性を押し倒して…。ど、童貞のくせにっ…な、なにを…。
カーペットに手をつきながら、僕は猛省し、そして考えた。
なぜあんな行動をしてしまったのか。なぜ僕を励まそうとしていた仮の妻にイラつきを覚えてしまったのか。なぜ顔を見るだけで緊張するのか。
そして三十一歳童貞は気づいてしまった。
僕は、彼女のことを好きになっているんだと。
自覚した途端、細胞という細胞が膨張し爆発してしまうような衝撃を覚える。
もちろん僕の一物も例外なく膨張してしまったので、片手でそっと触れながらも気づいてしまった恋心に動揺し、同時に納得もしてしまう。
浜口さんと終わってしまったことに安堵を覚えたのも、仮の妻にいなくなってほしくないと思ったのも、イラついてしまったことも、全部、彼女が好きだからだ。
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