★超恋愛マスター

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「合法っていうのは…?」 「例え話をするね。例えばひな乃ちゃんが弘光君からのアピールに手を焼いていたとする。でも実際彼女が警察署に赴き、夫が料理中に指を入れてくるので困ってますと相談したところで逮捕にはならないだろ?それどころか、わざわざ警察署まできて惚気話かよ奥さん勘弁してくれよ…と呆れるだろう」  僕はノートに何も書けないでいた。  頭が、指を入れる、と西条さんが口にしたところから止まってしまっているのだ。 「あの…、指を入れるって、あ、あの…」  どこにですか、は訊かなくても多分わかる。  僕は童貞だが、如何わしい類いのあれこれで知識だけは一般的なくらい持っている。  多分、お昼前のお洒落なカフェで口にしていいものではない例のアレだとは思うが、爽やかな顔をする西条さんがそんなこと言うわけないだろうとも思い混乱してしまう。  だが西条さんは「ああ、それはね」と軽やかに、だが周りに訊かれないように小声で、どこに指を入れるのか生々しく伝えてきたので、僕の脳が震えた。ついでにあそこも震えてしまった。 「つまりだよ弘光君。君は勢いのある攻め方ができるってことだ」 「せ、攻める…って。い、いやでも僕…、そ、そんな、指を、い、入れるなんて、僕は、僕は…」 「何もいきなり入れるわけじゃないよ。さっきのは極端な例さ。何事も段階を踏まないといけないでしょ。ひな乃ちゃんだって、弘光君が押し倒して胸を触った時怒っていたんだろ?」 「ま、まあ…」 「最初は手を繋ぐくらいのスキンシップでいいんだよ。弘光君に胸はまだ早い」 「…ですよね」  でももう何度か揉んでいるし見てもいるんですよ?  そう伝えたかったがやめておく。  言ってしまったらその経緯も話さなければならないだろうから、仮の妻の名誉のために黙っておこうと思った。  それから西条さんは僕に二つのアドバイスを教えてくれた。  童貞を激震させるような過激な内容ではなかったので胸を撫でおろしながら、メモ帳にきっちりと書き留めておく。  次の予約があるらしく、西条さんとの面会はその後すぐに幕を閉じた。  僕は決心を胸に秘めながら電車に揺られ、家に帰ったのだった。
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