★アドバイスの実践

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★アドバイスの実践

 帰宅して鞄を寝室に置くや、僕は台所に向かった。  何か食べ物はないかと物色する時以外近寄らないこの場所に来た理由は、家事をするためだ。  西条さんに教示して頂いたアドバイスは二つ。  一つは家事を率先してやること。西条さん曰く、家事をこなす男はモテるそうだ。  そしてもう一つは褒めること。気づいたことはなんでもいいから褒めるんだよとマスターは教えてくれた。  仮の妻はまだ帰っていないから、僕が今できることは家事だ。  ところがだ。台所の至る所が整理整頓され綺麗に保ってある。  どう見ても完成形なので早速困ってしまったのだが、ふとシンクに目をやると、仮の妻が朝使ったと思われるマグカップがあった。  よし、洗おう!  僕はシンクの前に固唾を飲みながら立った。そして黄色いスポンジをグワシッと握る。  別の手は洗剤のボトルをグッと握り、スポンジめがけてギュボボボボボと液体をかける。  あとはこれを揉み込めば泡立つはずだ!  もぎゅもぎゅもぎゅ。  もぎゅもぎゅもぎゅ。  そう、こんな感じ。  仮の妻の両胸を揉んだ時も、こんな風にもぎゅもぎゅと揉み込んだ…、い、いや…違う。  感触が似ても似つかないっ!おっぱいのあの神聖なる柔らかさにこのスポンジごときが勝てるわけがないっ!仮の妻のおっぱいの方が断然いい!ああっ、揉みたい!揉みたいっ!揉みたーいっ!  勢い余ってスポンジをシンク内に投げつけてしまった。 「ハッ!」  何をやっているんだ僕は…。  暫くその泡だらけのスポンジを見つめていたが、僕は食器洗いをするんだったと気づきそれを再び掴み取る。
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