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「弘さん、あれでしょ。浜口さんをデートに誘うっていうことで頭がいっぱいになっちゃってるんでしょ?」
「えっ、いや、そんなことはないけど」
「誤魔化さなくてもいいよ。だって最近の弘さんちょっと様子が違うもん。私とあんまり話したくないみたいだし、ゲームもしてくれないし。昨日も押し倒してきたし。むしゃくしゃしてるのかなって思った」
「それはっ」
君を意識して意識して意識しまくっているからだ!
なんて。ああ、そうはっきり言えたらどれだけ楽だろう。
考えてることをそのまま口にできる楽天的な人になりたい。仮の妻なんかはそんな感じの人だ。
「まあストレス溜まっちゃうのはわかるよ?本当は浜口さんと居たいのに私が戸籍上の妻として君臨してるんだから、もどかしいもんね」
「く、君臨?」
「ああ、君臨っていうとちょっと違うか。降臨?あれ、違うな。えっと、乳輪?」
「それも違うと思う」
思ったことなんでも口にしたいとさっき思っていたが、仮の妻はもう少し考えてから発言した方がいいと思う。
そんなことより、彼女は誤解している。
僕はストレスを感じて掃除機を投げたんじゃなくて、シャツを吸引されてパニックになった果てに掃除機を放り投げただけなんだ。
西条さんが家事をするといいと言うのでやってみたが、ここまで大失敗するとは...。
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