★看病

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★看病

 翌日、九時ごろに起床してスマホを確認すると、西条さんから連絡が来ていた。  奥さんとはいい感じ?きっと弘光君なら大丈夫だよ。あ、そうそう。女性はプレゼントをもらうのが大好きだから何か贈ってみるといいかもしれないよ。  という内容だった。  忙しいのに僕なんかを考えて時間を省いてくださる超恋愛マスターに感謝の念を抱きながら、やってみますと返信を送った。    プレゼント、と考えてみるとピンと来たものがある。エメラジョジョーンで購入したタイガーアイの石だ。  あれならきっと喜んでくれるかもしれない。  スマホをテーブルに置くと部屋の向こうから掃除機の音が聞こえてきた。  今日は仕事が休みなのかなと考えながらドアを開けると、リビングのフローリングに掃除機をかけていた仮の妻が僕に気づく。 「あ、おはよう!見て、壊れてなかったよ」 「ああ、うん。よかった」  仮の妻は今日も朗らかだ。陽だまりみたいな優しさと明るさに、安心した気持ちになって心が休まる。 「どうしたの?」 「ううん。なんでもない。あ、ちょっと待ってて」  僕は寝室に戻るとタイガーアイが入っている紙袋を取り、掃除機を止めたまま不思議そうにしている仮の妻に差し出した。 「これなに?」 「コップ割ったからそのお詫び…というか…」 「お詫び?」と首を傾げながら中身を確認する仮の妻は、タイガーアイの原石を目にした途端、輝く瞳を僕に向けた。 「ちょ、弘さん!い、いいの!?いいの!?えーっ、嬉しいっ!うわあっ、嬉しいっ」  想像してた以上に喜んでくれるので僕はとんでもない善行をしたような気分になり、ちょっと自分が誇らしくあり、なんだか照れてくる。
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