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「それって金運にいいんだよね」
「そうなの。金運大事だからねー。あ…うん、そうそう。これからはより一層金運大事になってくるからね…」
仮の妻の口調や表情が急に沈んだように感じて気になったが、次にはもうパァッと笑顔を浮かべたので、思い過ごしだったのか。
「ありがとう、弘さん。大事にするからね」
「うん」
そうして僕はニヤニヤしそうになる頬を引き締めながら寝室に戻った。
その後、ゲームを楽しみ、次にはゲームの生配信を始める。
配信のフォロワー数は確実に上昇し、コインを投げてくれる人も増えてきた。
ゲーム内容の実況も反響は良かったが、ゲームとは関係ない僕自身のことを話したりするとなぜだかコインの投下率が上がっていた。
とりわけ、自分には仮の妻が居て、その人におっぱいを代価にダイエットを強要され、無事痩せて、そして今では恋心があるんだという話をすると、何倍もの反響があった。
童貞の私生活に関心があるなんて世の中不思議だなぁと思うのだが、頑張れよ、応援してるよ、いい声してるね、実況わかりやすい、面白い、等の暖かみのあるメッセージを頂くのは、本当に嬉しくて、世の中捨てたもんじゃないんだなぁと人の温かさと希望を感じる。
社会との触れ合いを長年遮断してきた僕だが、配信をすることで得る繋がりが心地よかった。
勿論心無い辛辣なコメントをする人もいるので、その度に傷つき落ち込むことはあるが、それ以上に応援してくれる存在がいることがわかるので、立ち直るのも早くなっている気がする。僕からするとかなりの進化だ。
「みなさんありがとうございます。実は僕、今日は超恋愛マスターに役に立つアドバイスを頂いて実行してみたんです。そのおかげで仮の妻が喜んでくれたんですよね。あ、そうだ。そろそろ筋トレしますので、今日はこの辺で失礼します。よい一日を」
そう言って配信をしめると、『超恋愛マスターって何!?』というコメントがたくさん届いた。
今度、西条さんとコラボでもしてみようか。きっとあのお方の助言は多くの童貞を救ってくれるかもしれない。
筋トレをした僕はシャワーをしようと着替えを用意して部屋を出た。
すると仮の妻がソファーに寝ころんでいる。
あの体勢でいるときは大抵おっさんを虐めている時なのだが、スマホは持っていないようだった。
「僕シャワーしてくる」
「うん…。いってらぁ」
いつもの明るさがなかったが、眠いんだろうと勝手に思いながら僕は洗面所に向かった。
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