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ところがだ。
シャワーを済ませて出てみると、仮の妻の様子がやはりおかしいことに気づいたのだ。
同じ体勢でソファーにうつ伏せで寝ころんでいるのだが、全体的に弱ってるように見えるし、頬には赤みがさしているが力が抜けたような顔をしている。
「あの…、大丈夫?」
「ああ、うん…。大丈夫だよ」
「いや…、大丈夫の顔じゃない。ちょっと、待ってて」
急いで体温計を渡して測るように言うと、「大丈夫だって」と苦笑してくるから、「測ってください」と強要してしまった。
なんとか熱を測ってもらうと38.4の熱が出ていた。僕は慌てて仮の妻に布団に入るように言ったが、彼女は立ち上がって歩きながら「大丈夫、大丈夫」と取り合ってくれない。
「薬飲んで寝て」
「薬は飲むけど寝なくても大丈夫だよ」
「大丈夫じゃないって。フラフラしてる」
「してるかもしれないけど家事とかご飯とかつくらなきゃだし」
「それは僕が全部やるからひな乃さんは寝て!」
やや強めの口調で言ってしまうと、仮の妻は驚いたような顔をしてくる。
「弘さん、今…」
「あ、ご、ごめん」
「いや、…私の名前を」
「えっ。ひな乃さんで合ってるよね…?」
「うん…、合ってはいるんだけど、その…このタイミングでっていうか」
言いながら益々頬の赤みが増すので、熱がどんどん上がっているんだなと心配になってくる。
「とにかく、今日はもう何もしなくていいから寝てください」
「う、うん…」
やはり無理していたのか、仮の妻は大人しく物置部屋に歩いて行った。
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