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僕が全部やるから、と言い切ってみせた通り、実際に僕はやる気に漲っていた。
仮の妻の役に立ってみせるぞと意気込みながら部屋全体を見渡す。
掃除機をかけて、洗濯を回して、食器を洗って、夕飯をつくる。決して難しいことではない。
前回はいろいろあって大失敗してしまったが、今回はきっとうまくやってみせる!
「よしっ!」
と、掃除機を運び出すところまでは良かったが、どういうわけか掃除すればするほど部屋が汚れ、皿が割れ、液体が零れ、いろんな物が倒れる。
二時間後には野生のゴリラが部屋で暴れたとしか思えないような散乱とした状態が出来上がってしまっていた。
どうしてこうなった。いや、こうしたのは僕なのでちゃんと理由はわかっているが、どうしてこうなる。
家事を甘く見ていた。
こんなに大変だったなんて知らなかった。
仮の妻はいつもニコニコしながら平然とやっていたが、まさかこんなに疲労感を伴い、高スキルを求められるものだとは思っていなかった。
僕は家事をこなす全ての人を尊敬した。
そしてそれができない自分を暫く嘆いていたが、腹の虫が鳴ったので意識を料理へ移す。
掃除はうまくいかなかったが、料理ならできるだろう。弱っている仮の妻のためにお粥をつくろう。
スマホでレシピを検索し、鍋に白米と水を入れる。
沸騰したら弱火にして時々かき混ぜるだけなのだからいくら不器用な僕でも失敗はしないはずだ。
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