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言葉を失っていると、仮の妻が突進してきて飛び込むような勢いで僕を抱きしめてきた。
「っへ!?っへ!?へぇーっ!?」
な、何がどうなっている!?な、なにが!?な、なんで!?
「弘さ~んジュースとかありがとね~」
「い、いや、え、あの、もう、いいの?」
「うん、すっかり良くなったよ。もうピンピン、ビンビン、ギンギンしてる!」
「あ、それは、よかった」
「弘さん看病してくれてありがとうっ」
屈託のない笑顔を向けられ僕の口角も上がりそうになったが、そこでハッと気が付いた。
配信中だった!
慌てて画面を見てみると、
『仮の妻キターーーーーーッ!』とコメント欄が凄いことになっている。
やっべーぞ!と配信終了の手順を行おうとしたのだが、キーボードに伸ばそうとしてた腕を仮の妻が掴んで止めてくる。
「ちょ、ちょっと」
「弘さん」
僕を見る顔が真剣でまっすぐで、そして病み上がりのせいかやはり頬はまだ赤くて。
つまりは可愛すぎるので困る。
「昨日言ってたことは本当?」
「え…?」
「私のこと好きって言ったの、本当なの?」
心臓が暴れ狂う。
このまま発作を起こしてしまいそうになる危うさすら感じたが、ここで誤魔化すことや逃げることは絶対だめだ。
ゴキュン、と唾を飲みこんだ。
「うん…。好きです」
目を見て告げることができた自分を今回ばかりは褒めてやりたい。
彼女からどんな反応や返事が返ってきても、僕は僕のやるべきことは果たしたと思える。
だけど、まだ怖い。仮の妻は、僕をどう思っているのだろう。
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