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いつの間にか俯いていると、僕の両頬に手が伸びてきて、顔を挟まれ無理矢理上げさせられた。
目の前には笑顔の仮の妻。
「あ、あの…」
声を発したその瞬間、僕はまたギュッと抱きしめられた。
「私も好きっ!」
聞こえた声の意味を理解する間もなく、彼女は僕を後ろへ押してくる。
キャスター付きの椅子は車輪を回しベッドまで後退させられ、そこで一気に押す力が強まったせいで、僕たちはベッドにダイブするような形で倒れた。
もう、何がなんだがわからないのだが、はっきりわかることは、仮の妻が僕のお腹に跨って僕を見下ろしていることだけだった。
って、跨っている!?
こ、この体勢はっ!この体勢はあれだ!あれ、ほら、なんだっけな。如何わしいあれこれで知り得た知識にこの体勢を示す名前があったんだけどなんだったけな、
「弘さん」
「は、はいっ」
「私も好き」
瞠目してしまうと、彼女は僕に顔を寄せ、健康的なピンク色の唇と僕の唇を合わせてきた。
童貞は石のように固まった。呼吸も止まった。
仮の妻が「ふふっ」と笑う声が聞こえて覚醒したが、今度は耳元に口を寄せ、艶やかな声で「弘さん、今から私と童貞の卒業式しよっか?」と囁かれてしまったので、当然の如く童貞は失神してしまった。
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