新居へ引っ越し

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「あ、そうだこれ」  社長が鞄から分厚い何かが入った封筒を取り出し、私に手渡した。 「これは?」 「少ないけど私達からの結婚祝いだよ」  金だ!ここに入ってるのは金で間違いない!すぐに察した通り、封筒を開けると恐らく百万円札が入っていた。  やっぱ金持ちはすごい。父なんて見送りの時に五百円しかくれなかった。 「こ、こんなにたくさん…」 「少ないだろうが、少しは生活の足しになるだろう。弘光の口座に金が入るとはいえ、ひな乃さんの給料だと苦しいかもしれないしね」 「はあ…」  スーパーマーケットで品出し係をする私の給料は確かに少ない。でも家賃タダだし、弘光さんの給料が入れば問題ない。  問題ないからといってこの百万円はいらないってわけではない。ありがたーく頂戴した。  その後十分程、銀行口座や保険などの重要な話と、結婚式の予定をどうするか話した。  しかし愛のない結婚なのに神様や招待客の前で愛を誓うのもなぁと思うので、正直に「しなくていいと思います」と言ったところ弘光さんも同意。 「そうか。まあ、なくてもいいか」  社長と奥様にとっては、実際のところ私達の結婚式はどうでもいいと思ってるような素振りもあり、つまりはそういうことで決まった。
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