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今日は日曜日だが時間外窓口で提出ができるということで、みんなで社長が運転する車に乗り役所へ向かった。
社長と奥様は自分の目でしっかりと私達が籍を入れたところをご覧になりたかったようで、提出する緊張よりも、二人の眼差しの方にばかり気を取られ、入籍をした実感がまるで感じられなかった。
その後マンションの前で社長と奥様と別れた。
新居へ戻りリビングへ向かうと、弘光さんが早速段ボールを開封する。
私の荷物は段ボール大箱が三つ。弘光さんは四つ。
お互い物をあまり持ってないみたいだ。
私も荷物を整頓しちゃおうと段ボールに貼ったガムテープを剝がしていると、弘光さんが俯いたまま振り向いてくる。
「このテレビ、僕の部屋に運んでいいですよね?」
「え」
指を差す方向にある大きな薄型テレビに目をやる。テレビっ子でもないので構わないが、僕の部屋ってどういうことだい。
「あの寝室、一人占めする気なんですか…?」
「一人占め?…君の部屋もありますよね?」
「え、ないですよ。一つしか」
「…え?」
この家は1LDKだ。つまり寝室は一部屋だけ。
ずっとソファーに座ってたから確認してなかったんだ。
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