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突然弘光さんが駆け出した。図体がでかいので床を踏みしめる度にドスンドスンと振動する。
寝室に続くドアを勢いよく開けて、彼はそのまま固まってしまった。
私も彼に続き寝室を覗き込む。
それなりに広い部屋は、壁面収納が奥の壁にあり、パソコン作業などができそうなテーブルと椅子、一人用のソファー、大きな観葉植物、ランプなどの家具が並び、そして中央にはキングサイズのベッドが存在感を光らせていた。
「な、なんだこれは…」
隣で弘光さんが唸った。
「こんなの聞いてない!父さんは部屋を二つ用意するって言ってた!」
声も体も震えている。
その様子を唖然と見ていると彼は寝室に飛び込み布団とシーツを捲り上げ、下を確認し始める。
「それ、セパレート式じゃないと思いますよ?」
伝えると彼は驚愕したように飛び跳ねた。その動転ぶりにビビったが、私も入室しベッドに近づいていく。
私も二十七だ。結婚するということは、当然夜の営みも込みだってことわかっているし、覚悟もできてる。
そりゃあ、私もベッドを見たときはやっぱするのかと動揺したさ。しましたとも。
裸体で絡まる自分たちすら想像してしまいましたよ。というか、あの大きな体が乗っかってきたら重すぎてそれどころじゃないだろうなとか、棒も大きいんだろうかとか、大根みたいだったらどうしようとか、そんなことを考えて笑いそうになったのだから、私って多分神経が図太い。
「こんな大きいベッド初めて見ましたよ」と振り返ってみると、弘光さんがいない。
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