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そして私の読みは当たっていた。
帰宅し玄関で靴を脱いでいると、ドシンドシンと床が揺れた。
驚いて顔を上げると廊下から獰猛な目付きをした猛獣が、私を絞め殺さん勢いでやって来る。
「ひ、弘さん、ただいま」
「君だよね!取ったの!僕のお菓子どこやったの!」
いきなり糾弾されビビったけど、怒るよねぇそりゃあ、と予想はしてたので苦笑いが出てきてしまう。
「でもほら、ああいうのばっか食べてると健康に悪いしさ、ね?」
「僕のことは僕が決める」
「でも嫁としては旦那さんに健康的な食事をね、してもらいたいなぁって」
「僕は君をお嫁さんとは思ってない。いいから今すぐ返して!」
お嫁さんって、なんだその丁寧な言い方!
そんな場面じゃないのにキュンとしちゃったじゃないですか。
しかし「はやく!」と迫って来る大男の迫力は凄まじく、怯みそうになる。
が、もう一押しはいってみたい。
「いいじゃん少しくらい付き合ってくれたって。5キロだよ?たった5キロ痩せたら、この胸揉んでいいんだよ!?」
まだ言うか、と自分で自分に呆れるが、でも私は信じたい。
弘さんの男として欲望を。おっぱいに屈する姿を!
自らの手で片方の乳を一回揉むというパフォーマンスをすると、弘さんは刮目し、固まり、ジリジリと後ずさる。
「揉みたいんでしょ!?」
「も、揉みたくないっ!」
そう叫んで、弘さんは寝室に退避していった。
ちっ。あともう少しで屈すると思ったのに。やっぱりおっぱい作戦は効かないか。男ってそんな単純じゃないよね…。
そう溜息を吐き出しながら、私も物置部屋に進むのだった。
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