お見合い

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「すまないね。支度にてこずっているんだとは思うんだけど」 「あ、いえ。大丈夫です。男の人の支度って時間かかりますもんね」  んなわけない。  女の方が普通はかかるってのはもう常識だ。  けれどここは穏便に事を運ばせたいので全く気にしてませんよと笑顔を向ける。  玉の輿など自分には縁のない話だと思いながら生きてきた私に、突然舞い込んだ御曹司とのお見合い。何がなんでも食らいつき離してたまるか精神で臨んでいる。  事前に写真は頂けなかったけど、父が隠し撮りした写真に写っていたお見合い相手は顔も良かった。  父と同じ会社で、専務取締役という役職にあたり、次期社長候補。性格もよく、頼りがいもあり、爽やからしい。  そんなハイスペックとの結婚話、断る人がいるだろうか。いやいない。少なくとも私は絶対断らない。すっぽんのようにガブッと食いついて、振り回されたって離れてなるか。  そんな気持ちで四十分、ずーっと待っている。
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