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それから二十日後。
ついにその日は訪れた。
運動をしなくても食生活の見直しである程度は痩せられるのでは、と踏んだ私の目論見通り、弘さんは5キロ痩せた。
どうやって弘さんの体重減少に気づいたかというと、実は偶然なもので。
無人だろうと思って洗面所のドアを開けると、体重計に乗っている弘さんとばったり遭遇した、という話である。
私に見られたことがひどく恥ずかしかったようで、顔を赤くしながら逃げようとしたのだけど、私がその太い腕を両手で掴み引き留めた。
「減ってた?」
「減ってない!」
「減ってるでしょ~」
「減ってない!」
というやりとりを何回かして、結局痺れを切らした私が、もうもうもうと彼を引っ張りほとんど無理矢理体重計に乗せる。
そして5キロ減少が発覚したわけだ。
本当のところ、彼は私にその事実を知ってもらいたいと思ってたに違いない。本当に嫌だったら私なんて突き飛ばして逃亡することも可能なのだからね。
まったく、素直じゃないお人だよ。
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