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翌日から弘さんの目の色が変わった気がした。
変わらず部屋に籠っているのだが、トイレやお風呂を利用しに出てくる際の表情が、妙に真剣というか、滾っているというか。
「弘さん最近、なんかあった?」
食事を部屋に運んだ際に、ゲームに没頭している弘さんに訊いてみたが、「別に」しか言ってくれない。
どうしたんだろうなぁと思いつつも、私はいつも通り、パートと家事に勤しんでいた。
そんなある日、軽食にでもと糖分控えめバナナケーキをつくった。
弘さんにもあげようと、ドアをノックしかけた手が止まる。室内から声が聞こえてくるのだ。
「くっ」
「あっ」
「はっ」
「うっ」
苦し気な雄の声を耳にして、弘さんは部屋で何をやってるんだと眉を寄せる。
まさか…一人で大根を扱いているんじゃ、と妙な興味に駆り立てられ、こりゃあ見るしかねぇだろ、とそっとドアを開けて中を覗く。
そして私は瞠目した。いやぁびっくりしました。まさかと思いました。
なんと弘さん、腕立て伏せをしてたんです。
あの大きな体を二本の腕で支えるのはよっぽどきついのか、呻き声を響かせながら。
限界を感じたようで「あっ」とカーペットに倒れこむと、ドスンと床が揺れる。
私はそれを見た後、ゆっくりとドアを閉め、台所に戻った。
渡そうと思ってたバナナケーキを立ったまま食べながら、笑うのを止められない。おっぱいパワーの威力が凄すぎて、笑わずにはいられないのだ。
そうかそうか。弘さん、私のを揉みたいんだね。可愛いじゃないか。がんばれぇ、がんばれよぉ。できるよぉ。
私は弘さんに心の中でエールを送った。
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