北京ダック

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 早速豪華な中華料理に目を奪われていると、社長が皆を紹介し始める。  康孝さんと奥さん、五歳の長男、四歳の長女。そして奥様。愛犬のヴィクトリア。犬種は恐らくホワイトシェパード。 「お姉ちゃん、ひろみちゅの奥ちゃん?」  四歳の長女に太ももを叩かれ、「そうだよぉ。新妻だよぉ」と答える。「にいじゅま~?」と首を傾げる可愛さのなんたることか。  将来が楽しみだぜと内心打ち震えていると、社長の合図で合掌。  私は早速北京ダックに狙いを定めたのだった。  あまりに美味しくて北京ダックばかり食べつつ、一ノ瀬一家の会話にも耳を傾ける。  弘さんも言っていたけど同居計画があるらしく、新しく家を建てている最中で、それが楽しみだなぁという、そんな会話だった。  この家も二世帯が住むのに十分な広さだと思うのに、どうしてわざわざ建てるのかなぁ、と庶民の私にはスケールがでかすぎて理解もできない。  それにしてもなんだか問題が一つもない、全てが揃った幸せな家族を目の当たりにしてるような気がして、妙な居心地の悪さを覚える。アウェイ感をどうしたって感じてしまうのだ。  料理はおいしいので来た甲斐があるってもんだし、腹を満たせるだけ満たしたらすぐに帰ろうと思う。ついでに高そうな手土産でも持たせてくれたらいいなぁ。
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