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途端に顔を真っ赤にさせて「別にっ、関係ないでしょ」と後ろめたさでもあるように目を逸らすので、まさか筋トレじゃなくて大根遊びだったのではと怪訝に思い、目を下半身へ向けてしまう。
「どこ見てるの!?」
「あ、ううん。大根落ち着いてる感じだし違うかなって」
「大根って何!?」
「あ。ううん。気にしないで。それより今ちょっといい?」
何も言わずに目を細めてくるので、渾身の笑顔で応戦する。
「あのね、このゲーム一緒にやらない?」
顔の横まで持ち上げて存在を主張させようと横に揺らしたのは、実際に体を動かしてテニスバトルができるゲーム。
「弘さんこれに対応したゲーム機持ってるでしょ。だから一緒に」
「やりたくない」
「えっ、なんで」
「興味ない」
真顔で言った弘さんは「じゃあ」とドアを閉めようとする。
読めてた展開ではあるけど、もうちょっと悩んでくれたっていいじゃないか。
だが侮るなよ夫。私はこう見えて諦めが悪い。
閉まりそうになったドアの隙間に腕を通し、閉扉を妨げてやった。
「ちょっと」
「弘さん、私に負けるのが怖いんだね」
「は?」
「ゲームのプロと言っても過言ではない貴方が、素人の私にコテンパンにやられると思って逃げてるんだね」
「そ、そんなこと思ってない!」
「え~どうだかなぁ。まあ気持ちわかるよ?だって私強い感じするもんね」
「しない!」
「あら。じゃあ証明してあげる。勝負する?それともまだ負けるのが怖い?」
「やってやるよ!」
私は、しめしめ、チョロいな君、と内心ほくそ笑んだ。
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