運動の習慣化

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 もうちょっと説得に時間を要するかと思ったが、うまいことゲームの誘導に成功した。  私が体を動かす系のゲームを購入した理由は、弘さんのダイエットを後押しするためだ。  腕立て伏せもいいが、遊びを取り入れたらもっともっと楽しんで、そして飽きずに運動を続けられると思い、僭越ながらこの新妻も一緒に遊んであげて士気を高めてやろうと、まあそういう魂胆である。  私はどこかで一ノ瀬一家に対抗心を燃やしているのかもしれない。  弘さんは意志の弱い人じゃない、何もできない人じゃない。  それを証明したい気持ちがあるんだと思う。  たった数週間同居して、ほとんど顔も合わさない生活を過ごしてきたが、やはり育てることによる愛着が芽生えているんだと思う。  スマホゲームのあのおっさん達のように、大事に育て調教し、社会に羽ばたかせたい。まあ調教してるつもりはないけどね。  なにはともあれ、早速プレイ開始。  始めはお互い慣れるのに一苦労で勝敗も五分五分。勝った実感も負けた実感もなく、平和な感じで純粋に楽しんでいた。    だが、ある程度慣れてくると、人間は野心を燃やす。  私も本気で挑み、弘さんも本気に見えた。  サーブを打つ腕が風を切り、額に浮かんだ汗が(ほとばし)る。 「あいっ」と私が叫ぶと、「んぐわっ!」と弘さんも唸る。  ドスンドスンと地響きを鳴らして飛び跳ね、勝てば吠え、負ければ床を叩く。  気づけば三時間もぶっ通しで遊んでいた。
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