運動の習慣化

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 こんなに体を動かしたのは久しぶりだ。  テレビの前には倒れる熊と華奢な兎。  双方とも汗だくで、息が乱れている。 「弘さん、はぁはぁ、動きが激しかった…ね。はぁはぁ」 「だって君が…、はぁはぁ、くたばらない、から」 「たくさん、はぁはぁ、打ち込んでたね」 「なんか、はぁはぁ、痛い…」 「腰が?」 「…腰?違う、肩が」 「ああ、そっちね」 「え、なんで腰」 「あ、いいのいいの。気にしないで」  純粋にポカンとする童貞君に、気づかないうちに卑猥な会話へ進めようとしていた己に気づき、バツが悪いのでペロッと舌を出してコチンと自分の頭を拳骨する。  それでも意味が分からないといった顔をする弘さんだが、私がゆっくり立ち上がると、彼も続いた。 「お腹空いた。今日ご飯なに?」 「カレーだよ。でもあともう一勝負だけしない?」  流石に疲れたから嫌だと言われるかと思ったが、弘さんは「いいよ」と答えてくれた。  結果は弘さんの勝利。  ボロボロに負かされたが、弘さんの動きがしなやかで完璧だったので、そっちに感動して。 「弘さんすごいっ!」  素直に褒めると、弘さんが笑った。  へへ、と少年のように。  モジャモジャの髭が非常に邪魔ではあるし、肌も荒れているが、その無垢な笑みは可愛くて、一瞬脈拍が乱れた。    私は悟った。  この人本当にポテンシャルある!痩せたらやばいぞ。夫はやばいぞ。原石だぞ!  夫育成改革計画への意欲を改めて高めた瞬間であった。
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