信号機の青と赤

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信号機の青と赤

 それから夕食後にゲームをするのが日課になった。  最初は運動の定着化を図りたい私が、やろうよやろうよと無理強いしていたけど、弘さんも楽しんでいるのか、それとも連続で負かしてやったことがよっぽど腹が立ったのか、最近では弘さんの方から「今日は負けないから」と勝負を挑んでくる。  なにはともあれ計画通りに事が運ぶって気持ちいい。  ただ、やはり複雑なことはいくつか残る。  弘さんの部屋ごもりはそのままだ。  向かい合ってご飯を食べたことがまだ一度もない。  何度も誘ってはいるのだが、「これが僕の当たり前だ!」を貫き通すので、私も渋々お部屋まで運ぶのだ。  それからもう一つは名前を呼んでくれないこと。旧姓の中田でもいいのに、あの、と私を呼んでくるのだ。  私はあのさんかっての。  まあ長い目で見ようと思う。  一緒に運動してくれるだけでも十分ありがたいし、汗をかくので、自然な流れでお風呂に誘導することもできる。  前はモワン臭(なんかくさいなぁと思う体臭のこと)を漂わせることが多くて、お風呂入ったか確認しようものなら、「いつ入るかは僕が決める!」などとぬかし、睨んでくるので途方に暮れてたが、ゲーム後の汗のべったり感を不快に感じ進んでお風呂に向かってくれるので、とても良い循環ができている。
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