信号機の青と赤

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 なかなか触ろうとしないので、手首を掴んで補佐でもしてやるかと思ったが、弘さんの両腕は自らの意志で動き始めた。  両方の震える手を胸の前まで寄せると、一度「ふーっ」と息を吐き出し、目に決心の色が浮かぶ。  そして、彼は私の両胸を揉んだ。  前回のように押した感じではない。  ぱふ、ぱふ、と二回、彼はしっかり揉んだのだ。  二度目の方が気持ちは楽だもんね、と同感できるので頷いていると、また揉まれた。それも何度も。  弘さんの顔を窺うと、瞳孔が開き、小鼻が膨らみ、これはどう見たって興奮のそれ。  彼の乱れた息が洗面所内に反響され私の鼓膜を揺らすと、なんだかちょっと。  あれ、ちょっと?ちょっと!?待ちたまえ!君は夫なのだし、約束もしたし、同意の上でのこれなのだが、なんか、なんか、なんか、あらやだ、なんか、なんかっ!  自分が自分ではなくなりそうな危うさを覚えた私は、飛ぶようにして後退し、胸を守るように腕をクロスさせた。 「揉みすぎ!」  叱ってしまうと、弘さんはハッと覚醒したような素振りのあと、俯きながら「ごめん」と謝る。 「ま、まあいいんだよ。その、長かったから驚いただけ」 「…それで」 「ん?」 「それで…、次は、…何?」  私は目を見張り、だが心の中でほくそ笑んだ。  弘さんが自らの意志で変わろうとしている!  きっかけはおっぱいかもしれない。だが、次なるエロ体験の為に自分を変えようとやる気に満ちているんだ。  ()()ばらしい!
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