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「うまくいってるって、向こうも思ってたらいいんだけどね」
「思ってるよ。ひな乃はお父さんとお母さんが大事に育てた可愛い子だからね」
「えーなに、照れちゃう、ありがとう」
私と父は仲が凄く良いと周囲からは言われている。
反抗期も一度もなかった。
神経質だった時期は私にもあったけど、そのよくわからないストレスを父に向けることはなかった。
母が亡くなった後、仕事と家事と子育てをがむしゃらにやってきた父の辛さや孤独感を私は私なりに感じとっていたからだ。
大変だっただろうに、私をいつも応援してくれて優しくしてくれた父には頭が上がらない。
「お父さん、寂しくない?」
「そりゃまあ、たまには寂しいよ」
「急に一人暮らしだもんね」
チコちゃんがいるよ、と父はパソコン台の下に置いてあるケージを見やる。
灰色の毛並みが美しいジャンガリアンハムスターのチコちゃんは、ヒマワリの種を夢中で口内に詰め込んでいる。可愛いわぁ。
ふと、パソコンの横に置いてある器具に目が留まる。
「あれって絵とか描ける液晶タブレットだよね?なんであるの?」
すると父はチョコを湯煎で溶かしている私の手元へ目を移しながら、照れたような表情で教えてくれた。
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