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「じゃあな。いいサプライズパーティーにするんだぞ」
「うん。お父さんありがと。気を付けてね」
マンションまで送ってくれた父の車が見えなくなるまで見送る。
父にも誕生日を一緒に祝ってあげてほしいと言ったが、今夜は漫画同窓会が来るからという理由で断られた。
多分、本当の理由としては、弘さんに気を遣ってるんだと思う。
父は二、三回新居には来てるのだが、緊張でもしてたのか弘さんがほとんど話さなかったので無理させてるのではと思ってるらしい。
まあそういうわけなので、今夜は二人きりで誕生日を祝うことにする。
私が帰宅しても『おかえりハニー』と顔を出してくれることは決してないので、ケーキを冷蔵庫に隠し、物音を立てないようにハッピーバースデーの横断幕をダイニングテーブルからよく見える位置につける。
本当はたくさん風船を用意したかったが、三個膨らませたところで口輪筋と肺が機能不全に陥りかけたので早々にやめた。
新妻は準備を完了させた。
あとは主役のみ。
クラッカーを二本手に持ち、寝室のドアをリズミカルに叩いた。一回で出ないことは想定済みだ。
だが今日はサプライズなので弘さん自らが部屋を出てきてくれないと困る。
貴方が出るまであたしゃ止めないよ!の気持ちで、ドアを叩く。
そのうち気分も乗ってきて和太鼓を叩くような感覚で楽しんでいると、「うるさい!」と弘さんが勢い良くドアを開けた。
素早くクラッカーの紐を天井に向けて引っ張る。
パッカーン!!
飛び出すリボン、舞い散る紙吹雪。驚く夫。笑顔の妻。
完璧な手ごたえを覚えながら「誕生日おめでとう弘さん!」と祝った。
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