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「そういえば弘さん、随分肌がきれいになったよね」
「ああ…、うん。…まあ」
「折角だしその長い髪も切っちゃおうよ。私が通ってる美容院けっこういいよ。今度行かない?」
すると弘さんの背中が丸まった気がした。
なんだろう。まるで防御に入る巨大アルマジロ。
「美容院は嫌だ。あそこの人間は…嫌だ」
なるほど。
きっと彼はお洒落の最先端を常に追いかけるあのキラキラした美容師たちを恐れているんだ。
スーパーや薬局に行くだけでビクビクしてるのだから、美容院はハードルが高いのだろう。
だが安心しなさい夫よ。
「大丈夫。あの美容院、出張サービスもやってるから。来てもらおうよ。ね?」
「……切った報酬は?」
「…え?」
「何をさせてくれるの?」
ど、童貞…お前…。図々しくなったもんじゃないか。
ここでエロ取引を持ち掛けるとは。
いやぁ…成長したな。
その取引がエロ取引であるという文脈はなかったが、妻はわかる。
何をさせてくれるの?この直訳は、どんなエロ体験させてくれるの?で間違いない。
「そうだなぁ…」しばらく考えてから、「じゃあ」と口を開く。
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