全部消えた

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「消えたよ」 「え?」 「ニキビ全部消えた」 「ああ…」  言われてようやく顔面の肌を隅々まで注視する。いくつか跡は残るが、ニキビは一つもなかった。  脳裏には二つの神秘の山が浮かんだ。きっと弘さんも全く同じ二つの山を考えているのだろう。  活き活きした輝きのある瞳は私の胸を一直線に見つめている。  若干の恥じらいや後ろめたさも感じられるが、開き直っているようにも見えなくもない。 「約束、覚えてるよね」 「覚えてるよ。弘さん頑張ったもんね。よし、触らせてあげる。来なさい」  自室である物置に鞄だけ置きに行き、その後リビングのソファーに腰を降ろす。  するとすぐ隣に弘さんが座った。体重が減ったとはいえ大きい体なので座面が深く沈む。  自然と上半身が弘さんへ傾くので、座り直して体の正面を向けた。  夫は人生の分岐点に差し迫ったような真剣な顔をし、背筋を伸ばしている。 「ちなみに今まで誰かの胸触ったことある?」 「ない」 「そっか」  膝の上に置いた拳が僅かに震えていることに気づいた私は、緊張を解いてあげようとある提案をした。 「ブラのフック外していいよ?」 「えっ」  背中を向け「Tシャツを捲りなさい」と柔らかい口調を意識して命令する。  前から常々エロい命令をしてみたい欲があったので、いい機会だからそう言ってみたのだが、やはり良い。
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