全部消えた

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 鳴いてたまるかっ、と奥歯を嚙みしめたが、乱れた呼吸をする弘さんの煽情的な表情を目にした途端、ビリリッと強い電気を感じてしまった。 「あんっ」 「え?」 「ち、違うのっ。餡子パンって言ったの」 「そ、そっか…」  何とか誤魔化せたが、胸から電気はまだまだ走ってくる。  タイマーは残り二十秒。  もう、耐えられないっ。だがプライドは許さない。  すると解決策を閃いた。  いける!これならどんだけ喘いでも誤魔化せる!  そう確信すると同時に胸の一番敏感なところを刺激された。 「あぁん()全ピンッ!あ、あぁん()黒時代っ!あぁん()証番号っ。はぁはぁ。あぁん()全保障条約ぅんっ!」  あん、から始まる言葉で誤魔化しちゃえ作戦はどうやらうまくいってるみたいだ。  弘さんは無我夢中で、声に対する反応がない。何も聞こえていないんだと思う。  残り八秒。 「あぁん()仁豆腐っ!あぁん(アン)キロサウルスゥッ!」  残り三秒。 「あぁぁん(アン)デス山脈ぅっ!」  ピピピピピピ。  タイマーが鳴った。  夫の片腕は名残惜しそうにしながらもTシャツの外へ出て行った。  室内の空気を揺らすのは、夫婦の乱れに乱れた呼吸だけ。額には汗が浮かび、頬は紅に染まっている。  この場面だけ見ちゃうと、今やってたよね?この二人事後だよね?みたいな雰囲気だ。
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