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「でもまあ、こういう結婚の形でもうまくいってるんだね」
「そうですね。とても順調だと思いますよ」
「弘光君も実家では手に負えなかったらしいのに、今じゃひな乃ちゃんの言うこと聞いてダイエットまでしてるんでしょ?いやぁ、愛の力ってすごいよね」
いいえ、愛の力ではありませんよ。私の神秘なる乳山のお陰なんですよ。
と、正直に言ってしまいたいが、控えよと私の理性が言うので「まあ、はあ、ねえ」と生返事しておく。
「そっかぁ。じゃあひな乃ちゃんも弘光君のことすぐに好きになれたんだね」
「え?」
「まあ一緒に寝て交わる日々が続いたら好きじゃなくても好きになっちゃうよね」
「あ。いえ。私達交わってはいないんですよ」
「えぇっ!なんだって!?」
大袈裟に西条さんが驚いた顔をするので、なぜ私達が夫婦生活をしていないのかを簡潔に、というかもう、夫は童貞なので妻を抱く勇気がない、とドストレートに話す。
すると西条さんは憐れむような眼を寝室へ向けた。
「それで別々で寝てるんだね…。いやぁ、辛いねぇ」
「辛くないですよ?お互いそれが良くてこうなってますから」
「つまりひな乃ちゃんは弘光君には抱かれたくないと?」
「うーん。抱かれる覚悟はありますけど、抱かれたいかと訊かれると…」
あれ、どうなんだろう
自分の意志のはずなのに答えがわからなくなっている。
前はしなくていいのならしない、とはっきり思えた気持ちが今は曖昧だ。
仮に今夜弘さんに夜這いをかけられたら、私はどんな反応をするのかな…。
暗い物置に四つん這いで入室してくる弘さんを想像してみたが、エロティックな雰囲気よりもホラー感が強く出てしまい結局自分の答えが見つからない。
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