お見合い相手はもじゃもじゃニート

右に曲がった訳

　買いすぎた。

　高校生くらいの可愛いレジ係にお会計を伝えられてやっと無駄な物も買ってることに気づいたが、ここで『やっぱやめます』なんて言ったらその可愛い笑顔の裏でものすごく悪口を言われそうなので、黙ってクレジットカードを渡した。

　マイバッグ二つでは足りなくてビニール袋を二つもらい、購入品を入れていく。
私ってば、なんでこんなに買っちゃったんだろう。
　いや、なんとなく理由はわかっている。
　さっきの生乳初お披露目イベント後の気まずい余韻がずっと頭に残っているからだ。

私の乳山を見ていた弘さんのあの顔を思い出してしまう度に恥ずかしくなって、それがいらない物への衝動買いに繋がってしまったんだ。
　コーンフレークの大箱は三箱もいらないし、料理酒５リットルってまるで業務用だし、猫飼ってないのにキャットフードまで買っちゃったよ。あほすぎるだろ。

　そもそも買い物も必要なかったのだ。
　いつもパート先のスーパーでシフトの後に買って帰っているのだから、食品は家に十分ある。
　気まず過ぎたから兎に角出ていく理由が欲しかっただけなんだ。

　私は何をそんなに動揺しちゃってるんだろう。

　溜息を吐き出しながらスマホを操作して弘さんへ電話をかける。一人じゃ運べない量なので助けに来てほしいとお願いした。

　すごく渋ったような、嫌そうな、ふざけんなよと思っていそうな声だったけど、弘さんは来ることを了承してくれた。