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でもこれで心が折れてしまう私ではない。目の前に障害があるなら壊すかよじ登るかして進むのみ。
弘さんに自信を与えるためには、この恋を成就させるべきなんじゃないかと、育て人としての使命感が漲ってきた。
「弘さん。その人のこと諦めちゃだめだよ」
「…え?」
「話かけてみなよ」
「えっ!?」
「私があの女の人だったら、今の弘さんに声かけられたら嬉しいけどなぁ」
なんてったって私が愛情を込めて育ててイケメン君にしちゃったからね。
この姿でナンパなんてされちゃったら『そのままお持ち帰りしちゃってくらさい~っ』ってどこでもついて行っちゃうよ私なら。
それなのに弘さんときたら。
「絶対無理!」
呆れてしまうほど逃げ腰だ。そして顔が真っ赤だ。
「無理じゃないって」
「無理だよ!」
「一言だけでいいんだよ。こんにちは、今日は天気がいいですねって。そんな感じで」
「無理!話せるわけない」
「できるって。私とだってほら、こんなに普通に話せてるんだし」
「それは君になんの感情もないからだよっ」
「ああ、なるほどね。うん…」
わかりきったことを言われただけなのに、今胸の奥で感じた僅かな痛みはなんなのだろう。
でも、今は弘さんの話をしてるのだから、私の感情は後回しにする。
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