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「騎士団長の隊に異動……ですか?」
通達を受けたエルザは、疑問の声を出す。
それも当然だろう。何故ならエルザは、まだ騎士団の軍人として働き始めてからまだ1ヶ月も経っていないからだ。
「そうだ。
騎士団長直々に、貴官への配属命令を出された。」
そう言ってくる伝令の言葉の裏には、「断ることは許されない」という意味があるのだろう。
「かしこまりました。
親衛隊への配属、光栄であります」
「よろしい。
貴官は初期訓練過程を終了後、親衛隊への配属となる。
指導官への通知は、私からしておく」
「分かりました。
失礼します」
エルザは伝令に敬礼をし、その場から立ち去る。
それを遠巻きから眺める同期たち。
その視線には、諦めや嫉妬が見てとれた。
しかし、エルザの周りに寄ってくる人は誰一人としていない。
最初の方こそ、エルザに気に入られようと取り入る人々はいた。
エルザは普通の人に接するように優しくしていたが、やがて皆エルザから離れていった。
彼らは皆、彼女との実力の差に絶望したのだ。
エルザは1人だった。
母に親衛隊への異動を報告すると、自分の事のように喜んでくれた。
その日の夜は、いつもよりも豪華なご馳走だった。
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