プロローグ

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「……緊張しているか?」  馬で戦地へと移動するなか、そう声をかけてきたのはシリウスだった。 「騎士団長…… ……はい。 初めての実戦ですので」  エルザは馬の手綱を握りしめる。 「なに、私も初めての時は緊張したものさ。 誰でも最初は緊張するだろう。」 「……そういうものなのでしょうか。」 「そういうものなのだよ。 では、私は先を進んでいる。 隊を先導しなければならないからな」 「私のために、わざわざありがとうございます」 「部下の緊張をほぐすのは上司の義務というものだ。 そうかしこまらなくてもよい」  そう言って、シリウスは馬を前へと進めていった。  しばらくすると、戦争の最前線へと着いた。  そこでは、人々が血を流し、剣を打ち合い、銃弾が飛び交っていた。 「親衛隊!! 騎士団長、シリウス・ルーベルトが命ず! 帝国騎士の名にかけて、この戦に勝利せよ!」 『はっ!』  そう声が重なり、親衛隊は連合の兵士へと斬りかかる。  エルザも、それに倣って剣を抜き、歩を進めた。  しかし。 「なんで……!!」  手が震えて、剣を振ることが出来ないのだ。  そうこうしている間に、敵兵が斬りかかってくる。 「……っ!!」  エルザは自分の腕を叱咤し、夢中で剣を振った。  敵兵が、血を流して倒れる。 「……いや……」  思わず、エルザはその場にしゃがみこむ。  しかし、敵兵は容赦ない。  見た目が幼く弱そうなエルザは、格好の的なのだろう。  何発もの銃弾が飛んできて、何人もの敵兵が斬りかかってくる。 「いや……怖い、怖い……!! 助けて、お母様……お父様ぁぁぁぁ!!!」  エルザは無我夢中で剣を振った。  気付いたら、周りの敵兵は全滅していた。  気付いたら、そこでの戦は終わっていた。
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