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前方に、丸い体をした巨大なコガネグモが立派な巣を張っていた。黄色と黒の縞模様の大蜘蛛が、八本の脚を前後二本ずつ重ねて広げている。風で巣が揺れるたびに、いまにも飛びかかってくるんじゃないかと想像して、心臓の鼓動が跳ね上がる。
避けようとしたときだった。
ごつり、と音がして、足先に重い衝撃が走った。
「──わあっ!」
バランスを崩し、倒れる。素肌のすねにざらざらした固いものが当たって、折り重なる雑草の上に横倒しになった。
なにかに当たった足だけがじんじんと痛んだ。
大地に寝転がってしまっていた。草の茎を折ったせいか、植物が放つ青いにおいがより強く立ちこめる。
顔をしかめて起き上がり、転んだ原因を改める。なにかの石を蹴り転がしたのだと知った。
虫に気を取られて、足元がおろそかになっていた。見れば、大きな石は膝小僧に届かないほどの高さの、長細い楕円型をしている。
ぶつかった拍子に、四角い土台からずり落ちたらしい。横倒しになった石は古いものらしく、荒れた表面に苔が模様を作っている。わずかに緑がかった砂岩に、うっすらと人の像らしき形がふたつ、並んでいるのが見て取れた。
まずい、と思ってもとに戻そうとしたものの、重くて持ち上がらない。

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