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「電線にいたカラスの目なんですが。夕焼けの空だったせいか、反射した色が真っ赤で」
いえ、と首を傾げる。
変なことが続いてるので、気の迷いなのかもしれません、と続ける。
「このあいだ、仕事先から帰宅したら、すでに帰ってた娘が血相変えて言うんです。マルがいないって。マルはうちの犬の名前なんですけど……室内犬で勝手に外に出られるわけがないし、驚いてしまって、それでふたりで家中探したんですけど、でも、いない。娘とどうしようと慌ててたら、犬の足音がして、どこにいたのかふっと物陰から出てきて足元にやってきて……、いつの間にか平然とした顔をして、尻尾を振りながらこっちを見上げてたんです。けど、あのこ、たしかに家の中に、本当にいなかったんです」
なんだか薄ら寒くなった。彼女の目に、ただならぬ感情が渦巻いているのが見えた気がしたからだった。
「犬の目——って、赤く光るんですね」
「猫の目だって光りますよ」
彼女の発言に対し、とっさに言葉を返していた。
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