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言いながら、カウンターの上に伏せてあったスマートフォンを取り上げた。
画面をいじり、こちらに見せてくる。いくつかの画像が並んでいるのが目に入った。
緑の葉っぱを背景に、わずかに先が尖る青梅に似た実が十個ほど、ひしめきあっている。縦に密集していて、まだ色づかない枇杷の実を一本の棒にくっつけたようにも見える。
「これ、食用ですか」
「らしいですよ。食べたことはないのでよくわかりませんが、風味が強いらしくて和菓子に使われたりするようです。時期になると、早朝に取りに来る人がいるみたいで、手の届く範囲はなくなってたりするから美味しいんじゃないかしら」
だから気になってはいるんですよ、と言い、細身の冷酒グラスを取り上げて、すっと口をつけた。思わず見とれるような所作だった。
しかし、話題の見通しがたたない。彼女の口振りだと、実の味に興味はあるものの人の目は気になるし、朝早くに出かけて採りにいくほどではない、と言ったところだろうか。
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