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返答をわかっていても。
恥じらうように時折目を伏せて言われると、
たまらなくぐっときて。
「……可愛いことして」
するり、と頬を撫でる。
愛也の、今日みたいな行動はレアなだけに。
考えて、勇気を振り絞ってくれたんだなと、
愛おしさから再びその体を腕の中に収める。
「実は、買ってきたの」
「え?」
「このボディクリーム。
しばらくはローズの香りだったんですけど、
最近同じシリーズのラベンダーに変えたの。
だけど、直生はこっちが好みなのかもって」
そうか。
それでどこかで嗅いだような気がしたのか。
「うん、この匂い好き」
耳元から首筋にかけて口づけしつつ答える。
ラベンダーが嫌いということはないけれど、
ローズって女性ならではの香りって感じで。
匂いが、好きというか。
正確にはこの匂いをつけている愛也が『いい
な』と思ったというか。
「それにしても好みだってよく覚えてたね」
純粋に、記憶力に感心しながらそう言うと。
「……。
寝室で、良い匂いするって何度か言ってくれ
たから」
小声で、なんともいじらしい回答を述べる。
これについては確かに言ったかもしれない。
ただ正直なところ一つ一つを愛でることに、
表情や反応を見逃さないようにすることに、
全て費やしているから。
悪気はないが記憶から欠けてしまっていたの
だった。
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