2年後のふたり

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その後、クローゼットで仕度を済ませた頃、 大嶋さんからあと5分くらいでそっちに着く とメッセージが届いた。 打ち合わせの日はラクできちんと感もある、 セットアップが定番だ。 「そろそろ行くね」とリビングに向かうと、 愛也が玄関までやって来て見送ってくれる。 「夜は、しょうが焼き作って待ってますね」 「うん。 プリン楽しみにしてて」 「はい」 いつものように他愛ないやりとりをしつつ、 白いスニーカーを履く。 悠生はまだ眠っている。 息子と共に見送られるのも嬉しいものだが、 二人で、こうしているとふと新婚生活を思い 出させ、俺は片手で優しく肩を引き寄せた。 どんな時も挨拶代わりのキスは欠かさない。 顔を傾けて唇を重ねるとほほえみを浮かべ、 しなやかな頬を撫でる。 すると、その手の上にそっと手が重ねられ、 こんな言葉が呟かれた。 「昨日はずっと一緒にいられて幸せでした」 久しぶりに愛し合った夜は蜜みたいに甘く、 淫らで、官能的だった。 「俺も」 愛也らしい慎ましい言い回しに愛しさを抱き ながら、再び口づけると耳元へと近づいて、 吐息を孕んだ声で囁く。 「次はもっとたくさん可愛がってあげるね」
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