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「はあ、……困ったな。
仕事行きたくなくなる」
思わず、苦笑しながら吐息してハグをする。
昼間からこんな言動をこぼしてしまうのは、
それだけ情事の余韻で色ボケているせいだ。
昨夜は、ここのところの寂しさを満たすかの
ように、時間も忘れて夜中まで抱き合った。
愛してやまない妻からああ言われただけで、
どうしたってこうなる。
「ふふ、大嶋さんから怒られちゃいますよ」
愛也は、そんな本音を見透かしたみたいに、
俺の背中を撫でて笑う。
それとほぼ同時だった。
スラックスの前ポケットの携帯が震動して、
メッセージを知らせる。
あれからそろそろ5分ほど経った頃だから、
このタイミングはおそらく大嶋さんだろう。
「それじゃ行ってくる」
最後に、おでこに唇を置いてから微笑する。
そして、手を振って見送る妻の姿に応えて、
静かに、ドアを閉めた。
この後、迎えに来た車でメーカーに向かい、
俺は予定通り打ち合わせを終えて帰宅した。
まだ色ボケが抜けきれていなかったらしい。
昼間見送られた時にどうやら『もっと触れた
い』と、物足りなさを覚えていたことが抑え
られず。
夕食後、悠生がベビーベッドで眠ってから、
愛也とたくさんのキスを交わしたのだった。
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