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コミュニケーションもスキンシップ不足も、 行動次第で変えられる。 一緒に努力して仲を深めていけばいいのだ。 安心し、ふと意識が首筋へと向かったその時 だった。 甘く爽やかな香りがふわりと鼻腔を掠めた。 たしか、愛也が好んで使っている香水はフロ ーラルだったがそれとはまた違う気がする。 香水を、変えたのかな。 どこかで嗅いだような匂いを予想しながら、 密かに追求していると。 「……」 ふいに、直感が働いた。 いつにも増してさらさらの髪とこの香りは。 これはもしかして……、 「愛也、お風呂入った? なんか、良い匂いする」 きめ細かい首筋に鼻を近づけて嗅いでみる。 今日は仕事は休みで時間があったとはいえ、 普段は晩ご飯の後でお風呂だから妙に早い。 しかも、俺は久しぶりに早く帰宅した日だ。 ここで理由を伺うのは無粋かもしれないが、 本人から聞きたかった。 「……」 こくん、と頷いたのが洋服越しに肌に届く。 もっとちゃんと見たい。 そっと体を離すと向き合った体勢に戻して、 じっと次の言動を待つ。 すると、愛也は恥ずかしそうに少し黙って、 諦めたみたいに小さく吐息して口を開いた。 「今日は早く直生との時間が欲しかったの。 だから、準備して……」
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